ZEHと長期優良住宅の違いを比較性能や補助金税制メリットを解説

理想の住まいを追求する上で、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や長期優良住宅といった、住宅の性能や質を示す基準に注目する方が増えています。
これらは、快適性、経済性、そして将来の資産価値にも関わる重要な要素ですが、それぞれが目指すゴールや評価されるポイントには違いがあります。
これらの基準を理解し、自身のライフスタイルや将来設計に合った選択をすることは、満足度の高い住まいづくりに不可欠なプロセスです。
今回は、ZEHと長期優良住宅が持つ本質的な違いから、具体的な性能差、そして利用できる経済的メリットまでを詳しく解説していきます。
ZEHと長期優良住宅の根本的な違い
ZEHはエネルギー収支ゼロを目指す住宅
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、住宅の高断熱化や省エネルギー化を徹底するとともに、太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーを導入することで、年間を通じてのエネルギー消費量を実質的にゼロ以下にすることを目指す住宅のことです。
これは、単に快適な居住空間を提供するだけでなく、エネルギーの自給自足に近い状態を実現し、将来的な光熱費の負担を大幅に軽減することを主眼としています。
具体的には、建物の断熱性能を高め、冷暖房や給湯、照明といった設備を高効率なものにすることで、住宅全体で使用するエネルギー量を極限まで削減し、さらに再生可能エネルギーの発電量でその使用量を相殺するという考え方に基づいています。
長期優良住宅は質の高い住宅ストックを促進する制度
一方、長期優良住宅とは、現行の建築基準法で定められている建築物の基準よりも、さらに優れた性能と品質を持つ住宅を、国が認定する制度です。
この制度の主な目的は、良質な住宅が長期間にわたり適切に手入れされ、良好な状態で使用・維持されることを促進し、住宅の資産価値を維持・向上させることで、質の高い住宅ストックを社会全体で形成していくことにあります。
単にエネルギー効率だけでなく、構造躯体の劣化対策、維持管理・更新の容易性、省エネルギー性、バリアフリー性、可変性といった、住宅が長期にわたって安全かつ快適に暮らせるための多角的な性能が評価基準として定められています。

住宅性能で見るZEHと長期優良住宅の差
ZEHは高い断熱性能と一次エネルギー消費量削減が必須
ZEHの認定を受ける、あるいはZEH基準を満たすためには、住宅の断熱性能が極めて重要視されます。
具体的には、外皮平均熱貫流率(UA値)や冷房期の平均日射熱取得率といった指標で、定められた基準値をクリアする必要があります。
これにより、夏は涼しく冬は暖かい、快適な室内環境が実現されます。
さらに、一次エネルギー消費量についても、建築物省エネ法に基づく計算で、再生可能エネルギーによる発電量を除いた年間の消費エネルギー量がゼロ以下となることが求められます。
これを達成するためには、高断熱窓や高効率な空調・給湯・照明設備、そして太陽光発電システムなどの導入が不可欠となります。
長期優良住宅は耐震性や維持管理更新のしやすさも重視
長期優良住宅の認定においては、ZEHが重視する断熱性能や一次エネルギー消費量削減といった省エネルギー性能に加え、住宅の「長持ちさせる」ための性能が多岐にわたって評価されます。
具体的には、地震に対する安全性を確保するための耐震等級2(※耐震等級3が推奨される場合もあります。)以上、または耐震等級3の確保が求められます。
また、構造躯体の腐朽や侵食の防止、劣化対策等級3の取得、さらに将来的な点検や補修、リフォームが容易に行えるような配慮(維持管理・更新の容易性)も必須要件となります。
このように、長期優良住宅は、エネルギー効率だけでなく、建物の構造的な強さやメンテナンス性といった、長期的な居住性と資産価値の維持に焦点を当てています。

補助金や税制面で得られるメリット
ZEHには省エネ改修等への補助金がある
ZEHやそれに準ずる省エネルギー住宅の普及を促進するため、国は様々な補助金制度を設けています。
これらの補助金は、主に経済産業省や環境省などが所管しており、新築のZEHや、既存住宅のZEH化に向けた断熱改修、高効率給湯器や蓄電池の導入など、省エネルギー性能の向上に資する設備投資に対して支給されます。
補助金の額や対象となる工事、申請時期などは年度によって変動する可能性がありますが、初期費用の負担を軽減し、ZEHの導入を後押しする大きなインセンティブとなっています。
長期優良住宅は税制優遇やローン金利面でメリットがある
長期優良住宅の認定を受けると、取得や建築、リフォームの際に様々な税制優遇措置を受けることができます。
例えば、住宅ローン減税制度において、長期優良住宅は一般住宅よりも控除率や控除期間が有利になる場合があります。
また、不動産取得税や固定資産税についても、一定期間税額が軽減される措置が講じられています。
さらに、住宅金融支援機構が提供する「フラット35S」など、長期優良住宅の基準を満たす物件に対しては、金利が一定期間引き下げられる優遇措置も利用可能です。
これらの税制優遇やローン金利の優遇は、長期的な住居費の負担を軽減する上で大きなメリットとなります。
まとめ
ZEHと長期優良住宅は、どちらも高品質な住まいづくりに貢献する基準ですが、その本質的な目的と評価軸には明確な違いがあります。
ZEHは、創エネルギー設備と高断熱・省エネ性能で年間の一次エネルギー消費量を実質ゼロにすることを目指す環境性能・経済性に主眼を置く一方、長期優良住宅は、耐震性、耐久性、維持管理のしやすさといった建物の長期的な品質と安全性を確保し、質の高い住宅ストックの形成を促進する制度です。
両基準には、それぞれ利用できる補助金や税制優遇といった経済的なメリットも存在します。
どちらの基準がご自身の理想とする住まいづくりに合致するかは、省エネルギー性能や光熱費の削減を最優先とするのか、あるいは建物の耐久性や将来的な資産価値、メンテナンスの容易さを重視するのかといった、優先順位によって異なってくるでしょう。
